ある日の明け方、アメリカ・ノースカロライナ州在住の女性、シェリー・コーリーさんが病院に運ばれてきました。
数時間前、緊急の帝王切開手術で赤ちゃんを出産し、そこから昏睡状態に陥っていた彼女。
集中治療室に運ばれたものの、血圧は極端に下がっており、大変危険な状態です…。
医師たちは、彼らが「最後の望み」と呼ぶ人工呼吸器にシェリーさんをつなぎましたが、それでも容体は悪化する一方でした。
そばにいた夫のジェレミーさんは、当時の様子をこう振り返ります。
僕らはあの時点で、すでにシェリーを失いかけていることに気が付いていたんです。
そして医師は、ある提案をしました。
生まれたばかりの僕らの赤ちゃんの服を脱がせて、シェリーに抱かせるよう言いました。
彼らは、赤ちゃんの匂いを嗅ぎ、肌に触れ、声を聞くことで…
たとえ昏睡状態であっても、シェリーは『闘う理由』を取り戻すだろうと、そう言ったんです。
生後数時間の赤ちゃんに対する、シェリーさんの母性。
それだけが、彼らにとって、たったひとつ残された希望でした。
赤ちゃんの泣き声を、彼女に聞かせてやろうとしたんです。
そして、赤ちゃんが泣き声をあげたとき
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なんとシェリーさんの心拍が、急激に回復を始めたのです!
赤ちゃんの泣き声が、再びシェリーに闘う力を与えたんです!
そして思いました、「僕の妻が戻ってきた」んだって!
それから一週間後、シェリーさんは完全に昏睡状態から回復。
初めてしっかりと意識をもち、赤ちゃんと向き合うことができました。
彼女はその時の感動を、こう振り返ります。
夢と現実のはざまにいるようだった。
でも、これだけは覚えてる。
娘の顔をみて、ああ、なんて美しいのかしらって思ったの。
一週間眠っていた間のことはわからないけど、私にとってはそれが娘との初めての対面で、そして、とにかく圧倒されたの。
その後、赤ちゃんをリリアンと名付けたシェリーさんとジェレミーさん。
あれから2年近くたった今は、息子さんも含め、一家4人で幸せに暮らしています。
死の淵からの生還をも可能にした、母の愛。
その偉大さを感じずにはいられない、なんとも神秘的な出来事でした。