米カリフォルニア州ロサンゼルスの、とあるバー。お酒を飲みながら、思い思いに楽しんでいる人たちで賑わっています。
男性のお客さんがバーのトイレに用を足しに行き、手を洗っていると…
いきなり、鏡の中に謎の男が現れました。
丸刈りに、独特の服装をした謎の男。手洗い場にいるお客さんに話しかけます。
調子はどう?ところで、いま僕は刑務所から君に話しかけているんだ。
そう告げる謎の男。
「これって何かのドッキリとか、ジョーク!?」と、お酒を片手に面白がるお客さん。
ジョークだったらよかった。でもあの日、僕はいまの君と同じように酒を飲んで、そして車に乗って…人を轢き殺してしまったんだ。
最初は何かのイベントかと思い、上機嫌で楽しんでいたお客さんも、淡々と語られる男の告白に衝撃を受けた様子。どんどん表情が曇っていきます。
僕は、酒を飲んで運転した。僕が殺してしまった人は警察官だったんだ。彼には家族がいて、僕は4人の子どもと奥さんから彼を奪ってしまった…。
酒を飲んだのは自分の意志で、そのあとに車を乗ったのも自分の意志だった…。だから、どうか君には同じ選択をしないで欲しいんだ。
お客さんにそう訥々と話しかける鏡の男、クリス・カウディラ氏は、ある晩バーで飲んだ帰り道に飲酒運転で道路を逆走し、警察官を轢き殺してしまいました。
彼に下された判決は懲役15年。現在、フロリダ州刑務所で服役中です。
この仕掛けは、交通事故による死亡者をなくす活動をしている団体「We Save Lives」による取り組み。
賑わうバーのトイレに事前にカメラやプロジェクターなど仕込ませておき、刑務所にいるカウディラ氏の音声と映像で、バーのお客さんとリアルタイムで会話できるようにしたのです。
「刑務所で僕がずっと考えているのは、自分が殺してしまった方、そしてその方の大切な家族についてです。だから、酒を飲んだら絶対に車に乗らないよう、多くの人に伝えたかったのです」と、カウディラ氏はこの取り組みに参加した動機を語ります。
「鏡をよく見て、いま、あなたはお酒を飲んでいる。今日は自分で運転して帰るつもりですか?」
その答えは、もちろん「No」。カウディラ氏の話を聞いたお客さんは、「タクシーで帰るよ」「飲んでない友達に、安全に送ってもらう」と答えたのでした。
▼動画はコチラ。
飲酒運転をしてしまうと、鏡に映るカウディラ氏は自分の未来の姿になる…と、実感を伴ってしっかり思い知らせてくれるこの取り組み。
飲酒運転の悲劇をなくすためにも、多くの方に見ていただきたいですね。