真っ白なひげを蓄えたシュミットさん。
彼はその容姿を生かして、クリスマスになるとサンタクロースに変身し、多くの子どもたちを笑顔にしてきました。
しかし…ある体験を振り返り、語ります。
『もう二度とサンタを演じることはできない』とまで思ったんだ。
その日、彼のもとに、知り合いの看護師さんから一本の電話が入りました。
もう時間がないの。
切迫した声。
ただならぬ気配を感じ、シュミットさんは急いで支度を整え、家を出たそうです。
それから、15分後。
病室へ到着すると…少年の母親が、シュミットさんに「これを渡してあげてほしい」と、アニメキャラクターのおもちゃを手渡しました。
すべての状況を理解した彼は、周囲の人に告げます。
あなたたちが泣いているのを見たら…
私もきっと、自分の仕事をやり遂げられない。
ドアの向こうには…今にも眠りに落ちそうな表情の少年が1人、横たわっていました。
意を決し、部屋に入ると、シュミットさんはベッドに腰かけ、少年に笑顔で話しかけます。
そんなのありえないよ!
どうしてだい? 私にとって、一番大切な助手なのに!
すると、少年は憧れのサンタを見上げ、答えました。
シュミットさんは、「そうさ!」と言い、プレゼントを渡します。
弱り切った少年は、包み紙を開けることもほとんどままならない状態でしたが、中に入っているおもちゃを見て、ニッコリと笑いました。
天国に着いたら、どうすればいいのかな。
その言葉を聞いて、シュミットさんは答えました。
「うん」
「天国に着いたら、そこにいる人たちに、『僕はサンタさんの一番の助手です!』って伝えて。
そうしたら、きっと歓迎してくれるはずだから」
「本当に?」
「もちろん!」
少年は必死に頭を上げ、シュミットさんにハグをします。
そして
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・
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シュミットさんが返す言葉を探す間もなく…
少年はその場で、息を引き取りました。
部屋の中で何が起こったかを悟った母親たちが駆け込んでくるまで、彼はただ、その小さな体を腕の中に抱きしめていたといいます。
シュミットさんは、最後に語りました。
でも子どもたちの笑顔を見て…もう一度、役目を果たそうと決心がついた。
彼らのためにも、私自身のためにも。
やがて訪れるクリスマス。
「一番の助手」として天国に向かった少年が、素敵な時間を過ごしてくれることを、心から願ってやみません。