アメリカには、シビアな取り締まりで、容赦なく違反切符を切る交通課の警察官がたくさんいます。
もちろん違反や事故を未然に防ぐために必要ですが、中には白人警官が黒人の方々を過度に追い詰める事例もあるようです。
そんな中、黒人男性ラヴォンテ・デルさんがFacebookに投稿した、ジョシュア・スカリオーネ巡査の逸話に「これが本当の警官だ!」と称賛の声が集まっています。
ミシガン州のウエストランドで運転中だったデルさん。サイレンを鳴らしてやってくるパトカーの存在に気づきました。
このときデルさんは、後部座席に3歳の娘さんを乗せていたにも関わらず、着用が義務付けられているチャイルドシートを取り付けていませんでした。
停車するように指示され、違反切符を覚悟するデルさん。
スカリオーネ巡査は近づいて、どうしてチャイルドシートに娘さんを乗せないのか、と尋ねました。
手荒に違反切符を切られて終わるだろうと身構えていたデルさんは、巡査の丁寧な対応に驚きました。そして、少し胸の内を話してみようという気持ちになったそうです。
「最近何もかもうまくいかず経済的にも苦しいせいで、娘のためにチャイルドシートを買ってあげられないでいる」など、デルさんは身辺の事情を話しました。
するとスカリオーネ巡査は少し考え、こう告げたのです。
車に戻って、パトカーの後についてきて。ウォルマートに行こう
そしてウォルマートに着くと、
なんと、自分のポケットマネーで、チャイルドシートを購入してくれたのです!
「ウォルマートで並んで歩く俺たちを見たら、誰もが仲の良い友人同士だと思ったはず。俺に起こった出来事が衝撃的すぎて、この警官の名前も聞けなかったし、胸の名札さえ見ることができなかったんだ」
驚いて動揺を隠せなかったデルさんが、感謝の気持ちを巡査に伝えると、彼はこう続けたそうです。
娘さんの命を守るチャイルドシートを買えないでいるのに、さらに違反切符を切って罰金を払わせても、あなたにとっては何の助けにもなりませんから。
それに、私は自分のやるべきことをしたまでです。
デルさんのこの投稿は多くの人にシェアされ、テレビの取材もやってきました。それにより、このときの警官がスカリオーネ巡査だと判明しました。
スカリオーネ巡査も、このときの様子についてインタビューを受けました。
違反をしているからといって、すぐに切符を切るのではなく、この男性の話を聞いてみようと思ったのです。そうしたら、自分の境遇を素直に話し出してくれて。
その時、娘さんの安全のために、自分がチャイルドシートを買ってあげようと思ったのです。
デルさんは、この体験談をFacebookに投稿した理由として、「白人だからとか黒人だからという理由で物事を判断すべきではないということ、ちゃんと心で接してくれる人がいるということを、みんなに知ってもらえたらと思った」と語ります。
偏見を持たず、心と心で接することの大切さが伝わってくる素敵なエピソードでした。