オレゴン在住のブロガー、クリント・エドワーズさん。彼は3人の子どもの父親でもあります。
[ada]
ある日、1番下の赤ちゃんが起きてしまい、長い夜を過ごすことになりました。そして、ふと、こんな言葉を奥さんに漏らしてしまいました。
「ぼくは最低でも一緒に起きるよね。大半の男性は、そんなことしないさ。きみは、ぼくにもっと感謝すべきだ。」
クリントさんも、きっと疲れていたのでしょう。でも、それ以上に、普段から父親として、求められる以上のことを進んでやっている。そんな自分を認めて欲しい、という思いから発せられた言葉でした。
時刻は朝7時を過ぎたころ。膝の上に眠っているアスペンくんを抱きながら、イスにもたれかかっていた奥さんのメルさんは、その言葉を聞いて固まってしまいました。
クリントさんとメルさんは、以前から、時折、赤ちゃんが夜中に目覚めても、それは母親の仕事だと言ってのけ、付き合おうともしない父親たちの話をしていました。そのため、クリントさんは、メルさんが、きっと自分の言うことに賛成してくれるものと思っていたのですが…。
メルさんの口から出た言葉は、クリントさんの予想とは大きく異なるものでした。
「そういうことを言うのは、止めて欲しいわ。」
メルさんのポニーテールにした茶色の髪は乱れながらも、血走ったその目は、じっとクリントさんを見据えています。
当時3児の母でありながら、フルタイムで短大に通い、子どもたちが通う公立学校でボランティア活動も行っていたメルさん。学業と子どもたちのお世話の両立は大変で、その責任を1人で負うことに対し、とてつもないプレッシャーを感じていたそうです。
しかし、クリントさんにも言い分があります。自分も働きながら、家の掃除をするなど、メルさんを手伝っています。いわば、”母親の仕事”までしている自分が、なぜ褒めてもらえないのか、そう思わずにはいられませんでした。
「なんで? ほかの父親がやらないことでも、ぼくはたくさん手伝ってるよ。ぼくはいい父親だろ。」
すると、アスペンくんを抱きながら、メルさんはそっと立ち上がりました。そして、上の2人の子どもたちを起こさないよう、小声でこう言いました。
「私たちは対等に協力しているかしら。あなたが夜起きるたびに、あなたのご機嫌取りをしなきゃいけない気持ちになる。この子は、あなたの子でもあるのよ。」
クリントさんはカッとなってしまい、言い返そうとしたものの…。取り返しのつかないことを口にする前に、何も言わずそのまま仕事に向かうことにしました。
家を出て、職場に向かう途中。クリントさんは前回皿洗いをしたときのこと、カーペットを掃除したときのこと、洗濯物をしたときのことを思い返していました。
自分も一緒にご飯を食べたのに、自分も同じ家に住んでいるのに、なぜか毎回自分がしたことに対して、「褒めて欲しい」と見返りを求めていたことに気付いたのです。
「ごめん。きみが正しかったよ。ぼくたちは二人で協力しているんだから、夜中に起きたってくらいで、自分だけすごいことをしているかのように振る舞うべきじゃない。もうやめるよ。」
職場からメルさんに電話を掛け、クリントさんはそう告げました。
メルさんからは、少しの沈黙の後…。
「ありがとう」
そんな言葉が返ってきました。
「男性は働き、女性は家事をする。」共働きの家庭が多くなった現在、自分はそんな考え方ではない、という男性が多くなってきました。でも、やっぱり家事や育児は女性がメインで、「協力する」とは言いながらも、男性は「お手伝いする」というイメージが強いのではないでしょうか?
家族の形態は様々です。どんな役割分担にするのかは、もちろんそれぞれの夫婦が話し合って決めるもの。そこに正解はありません。でも、「協力」と「お手伝い」では大違い。「子どもは二人の子ども」という認識は、決して忘れてはいけない大前提なのではないでしょうか。