心臓病を患っている9歳の少年、オスカー君。生後すぐに受けた手術が成功し、毎日元気に暮らしてはいるものの、今もなお循環器の専門医にお世話になっています。
この日も、いつも通り先生の診断を受けて帰宅するところでしたが、「空手を習ってみたい」という希望が叶わないと分かり、とてもブルーになっていました。
そんな様子を見かねたお母さんは、「一緒にレストランで食事をして帰ろう!」と明るく振る舞ってみせました。
オスカー君は、ASD(自閉症スペクトラム)も抱えているため、とても繊細なのです。
ハロウィンのような飾り付けや、派手な演出が苦手なオスカー君のため、お母さんは先にレストランヘ入り、座る場所を自由に選んでいいかどうか確認しました。
そして、許可を貰うと、スーパーヒーローが大好きな彼のために、スターウォーズのポスターが貼ってある席を選びました。
ついつい食べ散らかしてしまうオスカー君のために、あまり人目に付かない席を探していたお母さんでしたが、ぴったりの席が見つかり親子で大喜びです。
席に座っていると、ウェイターさんがやってきて言いました。「あなた、スーパーヒーローでしょう。さぁ、あなた用のメニューをどうぞ。」
その瞬間、オスカー君の表情が曇りました。「空手もできない自分がスーパーヒーロー? そんなわけないよ…。」
元気づけようと明るく声をかけたウェイターさんでしたが、オスカー君の表情を見て困惑した様子に…。
慌てて取り繕おうとするお母さんも、息子の不憫さに胸を詰まらせていたのでしょう。空手を習いたいけど叶わないこと、憧れのスーパーヒーローになれないと落ち込んでいることを、ついウェイターさんに話してしまいました。
ほどなくして、注文した料理が運ばれてきます。
さっきとは別のウェイターさんがやってきて「おいしく食べてるかい?」とオスカー君に話しかけます。
今度は、「まずまずってとこかな」と、笑顔で返すことができたオスカー君。するとウェイターさんは手作りのバルーンアートをプレゼントしてくれました。
そのあと、また戻ってきた彼の口から出た言葉は、「プリンのサービスです。どうぞお好きなプリンを選んでください。」
いきなりプリンのサービスだなんてと、少々不思議に思ったものの、断る理由もありません。お母さんはとりあえず、言われるままにプリンをひとつ選びました。
そして、それを運ぶため再び戻って来たウェイターさんに、なぜプリンが無料なのかを聞いてみたのです。
「スーパーヒーローだからですよ!」
これがウェイターさんの答えでした。
そして清算の時に分かったのは、本当にこれがスーパーヒーロー割引だったということ。
合計金額の下に「スーパーヒーロー -$2.49」と印字されているのです。
スーパーヒーローになれないと知り、落ち込んだオスカー君を励まそうと入ったレストラン。まさかそこで「スーパーヒーロー割引」のプリンを頂くなんて!
これにはオスカー君も、「空手ができなくったって、スーパーヒーローになれないわけじゃない」と感じてくれたのではないでしょうか? 「ボクはもう既にスーパーヒーローなんだ!」と思ったかもしれません。
オスカー君が、すっかり笑顔を取り戻し、また楽しそうにぬいぐるみと遊び始めた姿を見て、お母さんは安堵と感激でいっぱいでした。
ウェイターさん、温かい優しさをありがとう。