その日、コルビー・サンダースさんが仕事を終えて恋人と一緒に車でファーストフード店を訪れたのは、深夜1時頃のことでした。
ドライブスルーを利用しようと車を進めると、そこには長蛇の列が。
そのためドライブスルーを諦め、店内で注文しようと中に入ったところ…
店内の注文カウンターも、人、人、人だらけです。
どうしてこんな遅い時間に?
他の店に行こうかとも考えた彼女でしたが、ひどく空腹だったため、そのまま順番を待つことに決めました。
ところが…。
並んだはいいものの、列は一向に進みません。
「キッチンには多くのスタッフがいるのに、おかしいなあ」
そう思い、注文カウンターに目をやったところ…
サンダースさんはあることに気がつきました。
対応している若い従業員の男性はニコニコ笑いながら…
『私は聴覚障害があります。すみませんが、もう少しゆっくり話していただけますでしょうか?』
そうお願いしていたのです。
するとカップルの顔はパッと明るくなり、女の子のほうが、もう一度ゆっくり丁寧に注文を繰り返しました。
でも従業員さんはまだわからなかったらしく、もう一度微笑むと、紙とペンを差し出しました。
カップルはすぐに、紙に注文を書いて渡していました。
2人とも苛立った様子はなく、にっこりと微笑んで見ていたのです。
彼女は、当時の様子をそう振り返りました。
この光景に目を奪われたサンダースさんは、自分の注文が終わったあとも店内を見ていました。
そしてお客さんの中には誰も、その男性従業員の接客について不満そうな表情を浮かべる人はいなかったと語ります。
しかし誰一人として、この聴覚障害を持っている従業員さんに対して、文句を言ったり苛立ちを見せることはありませんでした。
お客さんはみんな、この従業員さんの状況をよくわかっていて、紙に書いた注文を渡し、彼に微笑みかけていたのです。
彼に協力しているという喜びを、誰もが感じていたのだと思います。
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普段はあまりこのような投稿をしないというサンダースさん。
彼女は、自分がこの出来事をFacebookでシェアした理由についても語っています。
そのこと自体に感銘を受けたのももちろんですが…
いがみ合いが日常茶飯事な世の中で、あそこにいた誰もが、自分ではなく他人のことを考えて行動していた。
何よりもその様子に、心が洗われたんです。
本当に、忘れることのできない、ハッと目が覚めるような体験でした。
ひとりひとりの思いやりの連鎖が生んだ深夜の行列。
それはサンダースさんの心を癒す、とても温かい光景となりました。