アメリカでは、レストランなどで食事をすると、ウェイトレスにサービス料としてチップを支払う習慣があります。チップの金額は国や地域にもよりますが、通常は食べた料金の15~20%が相場であるといわれています。
そのチップにまつわる、アメリカ・ニューヨークのブレックファストレストラン「The Breakfast Spot」で起きた、ある出来事が話題になっています。
ある日、ウェイトレスのベッキー・ニールセンさんは、1人でお店にやってきた女性のテーブルを担当しました。
カプチーノとサンドウィッチを頼んだその女性は、食後、クレジットカードで支払いを済ませ、そそくさと店を去りました。
ここまではよくある普通の光景ですが、女性が支払いを済ませたレシートを改めて確認したベッキーさんは、あることに気が付きました。
女性の食事代は22.08ドル。そこに彼女がチップとして書き加えた額は、なんと77.92ドル。本来ならば、チップは4ドル程度で十分なのに対して、その20倍近い金額を残していった計算になります。
こんなにたくさんのチップを払ってくれたのに、何も言わずに去って行くなんて…。
驚きを隠せないベッキーさんでしたが、この女性が残していったものはお金だけではありませんでした。
レシートの空いたスペースには、こんなメモが。
「人生は短いもの。私の友人が昨晩亡くなってしまった。あなたはどうか(このお金で)大切な人と素敵な夜を過ごしてちょうだいね」
失ってしまった友人とは、もう一緒に食事をすることも、語り合うことも叶わない。彼女が残したチップとメッセージには、かけがえのない人を亡くした悲しみと、失意の中で親切に対応してくれたベッキーさんへの感謝が込められていました。
「私たちは、他人がそれぞれの人生の中で今いったいどういう状況に置かれているのか、うかがい知ることはできません。だからこそ、常に我慢強く、だれに対しても親切に接していれば、幸運なことに、またそれが巡り巡って自分にも返ってくるのです。」ベッキーさんはそう語ります。
女性の残していったレシートには、最後にもう一度、こう書かれていました。
「人生は本当に短いの!」
彼女の心遣いをしっかりと受けとめたベッキーさんは、女性の言葉通り、今週末、大切な友人や恋人と一緒の時間を過ごす予定です。
人と人とのつながり、そして「やさしさ」について考えさせられる、切なくも心温まる出来事でした。