アメリカワシミミズクのジジが、ミシシッピ州にある動物保護団体「Wild at Heart Rescue」に運び込まれたのは5月の終わりでした。
車に轢かれたとみられる頭蓋骨の損傷に加え、ひどい脳震とうを起こしており、体中は寄生虫だらけ、さらにアスペルギルス症(人間の肺炎と似た症状)まで患っていたというジジ。
「まさに、息をしているのが不思議なくらいの瀕死状態でした」と、同施設の設立者であるミッシー・ダビッソンさんは語ります。
平均的なアメリカワシミミズクの体重が900グラムから2キログラムであるにもかかわらず、ジジの体重は治療中に450グラムも減ってしまっていました。
「ジジほど深刻な状況にある動物の治療を担当した経験は、これまでありませんでした。ジジを助けられたのは、本当に奇跡としか言いようがありません。」とダビッソンさんは話します。
その奇跡の立役者が、「猛禽類の声なき声を聞ける男」との異名を持つ、ダグラス・ポジェキー先生でした。
同施設の所長でもあるダグラス先生は、猛禽類をこよなく愛し、彼らとの固い絆を築きあげることができると評判の名医です。
ダグラス先生は死の淵をさまよっていたジジに、手厚い看護を行いました。そしてジジは徐々に快方に向かい、自分でごはんを食べることができるまでに回復したのです。
その後、ジジの体調が安定したのを見計らい、ダグラス先生はミシガン州にいる家族に会いに休暇を取りました。
そして数日後…。ダグラス先生が休暇から戻ってくるやいなや、ジジは驚きの行動に出ました!
なんとジジは、翼を広げ、先生を「抱きしめた」のです!
先生がおらず、ずいぶん淋しかったのでしょうか。その表情を見ても、また会えてうれしいという思いでいっぱいの様子!
ダグラス先生もジジに抱きしめられた時のことを、特別な瞬間だったと振り返ります、
ダグラス先生の育った家には、納屋があり、そこによくアメリカワシミミズクがやってきていました。しかし、ダグラス先生はじめとする、お父さん以外の家族はみんな、その姿を見ることができなかったそうです。
その後、お父さんが亡くなった晩に初めて先生は、アメリカワシミミズクが納屋の上にいるのを見つけました。アメリカワシミミズクは、お父さんが亡くなった現場をじっと見つめていたそうです。亡くなった親友を悼んでいたのでしょうか…しばらくして、ミミズクは森の中へと帰って行きました。
完全に体調が戻った後、ジジは野性に帰される予定です。
「ジジは、ダグラス先生を信頼しきっています。ジジの行動と表情を見れば、一目瞭然でしょう」とダビッソンさん。
少々寂しい気もしますが、いずれ元気な姿で飛び立っていくことが、ジジからダグラス先生に対しての最高の恩返しとなるに違いありません。