ジェネットは、ジャコウネコ科に属する雑食動物で、ヒョウのようなまだら模様とリスのような長い尻尾を持ち、アフリカからヨーロッパ周辺のエリアに生息しています。
そんなジェネットの赤ちゃんが3匹、南アフリカ・ホエドスプルート地区付近の倒れた木の水たまりから発見されました。
どうやら近くに住む子どもたちが、出産したばかりのジェネットの親に石を投げたりしていじめていたために、親は赤ちゃんのもとを去ってしまったようなのです。
連絡を受けたNPO団体「Daktari Bush School and Wildlife Orphanage」の設立者、イアンさんととミシェル・メリフィールドさん夫妻は、すぐにジェネットの赤ちゃんを引き取りました。
「まだ生後2週間ほどの赤ちゃんたちには、親の体温とお乳が必要不可欠でした」
メリフィールドさんは、できる限りのことをしようと、事務所にいた3匹の犬のもとに、赤ちゃんジェネットを運んできました。犬たちが親代わりとなって、赤ちゃんたちに体温を分けてくれないかと期待したのです。
そしてその試みは、期待以上にうまくいきました。3匹の犬のうちの1匹、キャンディが、この赤ちゃんジェネットに興味を示したのです。また赤ちゃんジェネットたちも、キャンディに懐き始めました。
メリフィールド夫妻が注射器で温かいミルクを飲ませると、赤ちゃんたちは体温を保とうと、キャンディのもとに寄り添うのです。
そしてついには、キャンディの乳首にも吸いつくように。
キャンディは過去に子犬を産んだ経験はありましたが、その時は妊娠もしておらず、お乳が出るはずはありません。
しかしどういうわけか、赤ちゃんジェネットがキャンディの乳首に吸い付くと、なんとお乳が出るようになったのです。
「キャンディは、施設に保護された動物にはたいてい興味を示すのですが、まさかお乳まで出せるようになるとは…。これが母性というものなのでしょうか」
この現象にメリフィールド夫妻は大変驚きました。
こうして、キャンディはマスイカ、サッカ、そしてチャウチャウと名付けられた赤ちゃんジェネットの母親代わりをするようになりました。
犬のお乳は、ジェネットのお乳よりもカルシウムが少ないので、授乳後は、メリフィールド夫妻が注射器でカルシウムを与えます。
赤ちゃんジェネットの近くに知らない人間がやってくると、キャンディはひどく警戒するそう。本当に自分が赤ちゃんたちの母親であると認識しているようです。
キャンディの献身的な愛情と母乳のおかげで、マスイカとサッカは元気に大きくなり、野性に返されました。しかしチャウチャウだけは、ほかの2匹と同様にたくましく成長しましたが、ストレスの影響で野生に返すことはできませんでした。
そのためメリフィールド夫妻は、チャウチャウだけはこれからも施設で面倒を見ることにしたそうです。
今ではチャウチャウも大人になり、本来の夜行性の習性を発揮し、日中活動する犬のキャンディと触れ合う機会も減ってしまいました。
しかし、夫妻がチャウチャウの囲いに入る際には、キャンディも大きくなったチャウチャウのもとに遊びにやってきます。
キャンディのおかげで、生き延び、成長して野性に戻れたマスイカ、サッカ、そして、同施設で一緒に暮らしていくことになったチャウチャウ。
種族は違っても、彼らは家族です!