これは、ある男性の行動に、怒りを抑えきれなかった女性が書いた1枚の手紙です。その行動というのは、男性が飼い犬を置き去りにして引っ越して行ったことです。
[ada]
12年もの間、家族として一緒にいたはずなのに…。そこに書かれていた文章は、置いて行かれた犬の、悲痛な心を代弁しているかのようにも思えました。
あなたは12年前に子犬をもらってきました。そして先日、その犬を置き去りにしたまま、引っ越して行きました。
突然独りぼっちになっていしまった犬は、行く宛もなく彷徨い、疲れ果てて一軒の家の前で座り込みました。当然その犬は、保健所へ連れて行かれました。殺処分専門の保健所です。
首輪を付けていなければ、マイクロチップも埋められていない状態。普通なら、どこの誰の飼い犬かは、到底分かりっこありません。でもその犬は、ウィートン・テリアでした。この辺りでは非常に珍しい犬種です。
だから、ある人が覚えていました。その犬の飼い主が、あなたであるということを。
だから、あなたのもとに連絡がいったのです。さぞかし驚いたでしょうね。
でも私たちだって驚かされましたよ。わざわざ連絡をしたにも関わらず、あなたは仕事の都合がうんぬんかんぬんと言い訳をして、引き取るのを拒んだのですから。
その犬はもう老犬。しかも、長年あなたが無視していたおかげで、足腰も不自由な上、耳や目も悪い。残念ながら、もらい手がつくとは思えません。
そんな理由もあって、今回の件に関わった全ての人々が、その犬を助けたい一心でひとつになりました。
まず、動物愛護センターのシャノンさんが動きました。保健所へ連絡し、何とかその犬を助けてくれないかと頼んだのです。すると、保健所のメリッサさんとスーさんが、すぐに里親募集の案内を作ってくれました。
「この犬には、今すぐにでも温かい家庭が必要です。登録手数料や獣医にかかる治療費などは、全てこちらが負担します!」
私は「どうか誰かが、その犬をもらってくれますように」と祈りました。その犬を無条件で受け入れてくれる、心優しいファミリーが見つかりますようにと。
でもそのうち、あることに気が付いたんです。もしかしてそれって、私たちでもできるんじゃないかって。
ちょうどその時、ゆっくりと私に歩み寄ってきたのは、その犬でした。こんな話、退屈だったかしら?
ここからの、保健所のスーさんの行動力は、見事なものでした。定休日前に引き取りの手続きをするため、超特急で事務処理を済ませてくれたのです。
施設を出た私たちは、実際に、その犬の保護に関わったスタッフに会いました。彼は、かわいそうな犬がようやく我が家を見つけられたことを一緒に喜んでくれ、その犬を抱きしめてくれました。そして「登録料の10ドルは必要ない」と、申し出てくれたんです。
だから、私はその代わりに、保健所に20ドルを寄付しました。
そして、家へ連れ帰ってからは何度もシャンプーし、注意深く毛を刈りました。見たところ、我が家を気に入ってくれそうなので、私もほっとしています。
そうそう、その犬には新しい門出を祝う、新しい名前をつけましたから。
モーリーです。よろしくね。